ワークショップ / NPO法人 こどもの広場もみの木

子どものペースで歩こう Vol.1

2018/5/31

今日から地域の皆さんをお誘いして、舞岡公園で子どもたちと一緒に1日を過ごすワークショップが始まりました。もみの木園の子どもたちも、お客さんを迎えて過ごす4日間の始まりです。朝のあいさつは、いつものように階段のステージで。
ひとりひとりの名前を呼ぶと、子どもたちは、自分の表現で(わたしだよ!ここにいるよ!と表明するため)あいさつします。
するとひとりひとりの表情がにこにこしてきて、子どもたちの〝場〟が和やかになっていきました。さあ、出発です。 
まずは、おおなばの丘で、すみれぐみ(年中・年長組)が10日前に仕込んだ小梅のジュースをご馳走することから。
小梅ジュースを飲むと、元気が出てきます。 
雲行きが怪しくなってきたので、雨が降り始める前に、田んぼへ向かうことにしました。
リュックを背負って歩き始めると、丘のあちこちに〝モグラ塚〟が出来ていることに気づいた子どもたち。
すぐにしゃがみ込んで、手で土を掘りながら、モグラのトンネルを探し始めました。手で探っていくと、土のやわらかい所が見つかり、
ぽっかりと空洞になっていて、手を入れるとトンネルの方向も分かります。あちこちで次々にトンネルを探り当てた子どもたちは、
土の中でトンネルが長々と繋がっていることを想像したことでしょう。  
今週初めに田植えを済ませたもみの木の田んぼを見ていただきたくて、田んぼに着くと、雨が降り始めました。
上屋でレインコートを着て、瓜久保の家へ向かいました。雨は降ったりやんだり。瓜久保の家でお弁当を食べると、
参加者の子どもたちの表情が一段とにこやかに、動きも活発になってきました。
瓜久保の家の押入れに一緒に入ったり追いかけっこをしたり、子ども同士が関わりあって楽しそうでした。
朝出会った子どもたちは、一緒に遊び出すのに、これくらいの時間が必要だということなのでしょう。
これが子どもの持っているペースです。
帰り道、こんな出来事がありました。山の草刈り作業をしている道を通りかかったとき、
「作業中」の看板を触ったTKくん(4歳)に対して、3歳のTIくんが、「触ったらだめ!」と言うためにTKくんの腕を噛んだのです。
TKくんが大声で泣きました。ふたりの周りに、みんなが集まってきました。
「どうしたの?」と、何があったのか知りたいから口々に聞きます。TKくんは、噛まれて痛くて泣いていると誰もが思ってそばにいます。
看板も倒れていないのに、TIくんは「触ったらだめなの!」と言い続けました。TKくんは、まわりに大勢の人が集まっているし、
時間の経過と共に言葉を失い、立ち上がる力もなくなっていたので、みんなでその場を離れることにしました。
TKくんは、保育者の大西さんとふたりになると、気持ちを立て直し「TI、許せないんだよ」と言い「TIに言いに行く!」と駆け出したのです。さくらなみ池でTIくんに追いつき、向き合ったふたり。TIくんは、一瞬、TKくんに微笑みかけましたが、
TKくんは「TI、今は許せないんだよ。」さらに一呼吸置いて「明日、許せるかもしれない。」と続けました。
今日はここまで…。

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命のこと Vol.2

2018/6/1

ワークショップ2日目。もみの木園の子どもたちの中に、4月と5月に仲間入りした子どもたちがいます。
お母さんと一緒のおうちの生活から、仲間と一緒の園生活へ踏み出したばかりの子どもたちが、このワークショップで、
毎日お客さんを迎えているのです。無意識だと思いますが、確かに迎える側になっていると感じられるのです。
同時に一緒にいる子どもたち、子ども同士に安心感を持っていることも伝わってきます。
園に慣れるとは、一緒に過ごす人に安心するということだと思うのです。
そしてひとりひとりが、毎日やりたいことを見つけて心を動かして遊ぶことが、園生活のすべてです。
今日も、おおなばの丘で小梅のジュースを飲んでから、子どもたちが思い思いに動き始めました。
小さな小さな野の花やさくらんぼの実で赤紫色に染まった手を見せに来てくれる子どもたちの様子から、
子どもは、ちゃんと自分で自然をキャッチしていることに気づかされます。
大きな桜の木の太い横枝にまたがって進む子どもたちもいます。ここで遊ぶということが、どの子にも分かって、
からだがどんどん動き出していく感じでした。そんなとき、草の中に、小さな虫を見つけた子どもたちがいました。
背中が光ってきれいな虫を、何人かの子どもが見つめてました。すると突然、ひとりの子どもが、足で踏んづけたのです。
一瞬の出来事でした。動かなくなった虫を囲む子どもたち。踏んだ子どもは、言葉を失い、立ち尽くし、困り果てて、
小さな声で「蜂蜜をなめさせてあげれば…」と言いました。自分で何が出来るか考えたのでしょう。「死んでしまったんだよ」
「もう生き返らないんだよ」「かわいそう」「お父さん、お母さんにもう会えない」…子どもたちが、いろんな思いを伝えていました。
取り返しのつかないことが起こってしまったのですから、みんなで精いっぱい考えて、出来ることをしなければなりません。
子どもたちは、命のことを、どのように知るのでしょうか。5ミリにも満たないこの虫は、金色に光っていた丸い体がつぶれて、
触っても動かなくなってしまったことを知りました。これが死んでしまったということ。もう生き返らない。
誰にもどうすることも出来ない。踏まなければ、今もこの草の中を動いていたのに。子どもたちみんなで、
起こったことを深く受けとめることしか出来ませんでした。
野にいると、たくさんの生き物に出会います。生きている虫と死んだ虫、どちらも子どもたちのすぐそばにいます。
子どもたちには、生きている虫、死んだ虫、どちらの体の中にも命が見えるように育ってほしいと思うのです。
今日も、中丸の丘に登る階段で、葉陰にカノコガを見つけました。見つけると後ろからやって来るみんなに知らせたくなり、
落ち葉にそっと乗せて「見て!」と差し出したとたん、ふわっと飛び立ちました。そのとき「わぁ~!」と歓声が上がりました。
また、アリの行列に見入ったあと、踏まないように細心の注意を払って歩き始める子どもたち。
子どもは、こうやって命を見ているのではないでしょうか。

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誰もが心を満たして Vol.3

2018/6/3

今日は、日曜日。5組の親子をお迎えして、小学生(1年、2年)も遊びに来ました。
小学生に小梅のジュースをご馳走できて、これも嬉しいことでした。子どもが受け継いで作ってきたものですから…。
まずは、おおなばの丘で思い思いに遊び始めた子どもたち。今日は小学生が一緒なので、これまでになかった鳥の巣作りが始まりました。
実は来ていた小学生が、卒園間近の頃、鳥の巣作りをしていたことがあり、それを思い出したようです。
草を編んで、おわんのような形にするのと同時に、苔、ふわふわの綿毛、小枝、木の皮などが、平らな石の上に集められていました。
小さい子どもたちも興味津々、いろんな材料が並んでいるのを見たり触ったりしています。
ふわふわの綿毛は、いったいどこにあったのでしょう。参加者の子どもを誘って私も一緒に探しに行ってみました。
おおなば橋を渡ってけやき広場のトイレの前に、いっぱい生えていました。子どもたち、よく知ってるなと感心していると
「こっちにもあるよ!」と4歳のTGくんも案内してくれました。何かを想像し、材料を集め、組み合わせて、
創り上げていく過程が面白いのです。みんなが、生き生きと共鳴しあっている様子が伝わってきました。
この鳥の巣作りは、まだまだ作業時間が必要でした。しかし、ワークショップの参加の皆さんを、田んぼにも案内したいので、
集めたものを種類別に袋に入れて、持っていくことにしました。巣作りの続きは、また後で。
田んぼの気持ちよさは、格別でした。お弁当の後、また小学生が幼児期に遊んだことを思い出して「くり山に行きたい」と言い出しました。
今年度は、まだ一度も行っていないくり山に、まずは小学生と下見に行ってみました。山道や頂上の遊び場の草の生え具合を見て、
草の丈は伸びていますが、まだ歩けるし遊べます。  くり山のふもとの井戸で、小さい人たちの水遊びが始まっていたこともあり、
参加者の子どもたち(みんな4歳)とすみれぐみを中心に、行きたい人を誘ってくり山に登りました。
さわやかな風が吹き抜ける田んぼとは一変して、くり山は蒸し暑くてびっくり。小学生が、太い切り株と丸太を船に見立てて遊び始めました。
子どもたちみんなが、ぎゅうぎゅう詰めになって丸太の船に乗り、草の大海原に船出して遊んでいました。
すぐにごっこ遊びの世界に入れる子どもたち…このまま遊び続けられたら、どんなにいいだろうかと思いました。
朝の鳥の巣作りと同じく、また遊びをおしまいにしなければなりません。丸太を元に戻して、くり山を下りていく子どもたちは、
さっきの遊びの余韻のなかにいるようでした。  
山を下りるとそこは別世界。井戸で遊ぶ子どもたちが、はじけていました。
ひとりひとりが、何かをして心を満たして1日の活動を終えることが何よりです。その応援をするのが、保育だと考えています。
子どもは、今日の終わりがあることを知っていて、だからこそ、ひとりひとりの時間を大事にしたいと思うのです。

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2歳から6歳 Vol.4

2018/6/4

もみの木園は、週3日、2歳から6歳の子どもたちが一緒に活動することを基本にしています。
その上ですみれぐみ(年中・年長)は週5日活動します。すみれぐみは、大きい子どもとして、小さい子どもたちを助けることが、
たくさんあります。一方的なことばかりではありません。小さい人と一緒に味わう楽しさ、心が通う喜び、人と手をつなぐ意味、
子ども同士だから分かる気持ちに触れることなど、一緒に育ち合うことの大切さを知らされ続けています。  
もう12年も前のこと、すみれぐみの子どもが、舞岡で仲良しになったTおじちゃんから「神さまの棒」を託されました。
そのとき「小さい子どもを助けるんだよ。力がなくなった時は、この棒から力を借りてね。」と言われました。
それ以来、すみれぐみの子どもが、この棒を受け継いできており、昨年度の卒園式の朝、卒園するFくんから、
Nくん(5歳)が預かったのです。その時からNくんのリュックの中に入っていた神さまの棒、6月になる今まで、
みんなの前に出てくることはありませんでした。実は先日、3月まで一緒に過ごした小学1年のFくんから、すみれぐみは、
この棒の力を借りたら…と言われたのです。 
今朝、おおなばの丘の桜の木の下で、集まって話し合っていたことは、そのことでした。
そこには、ことりぐみの子どもたちも来ていました。すみれぐみが真剣に話し合っているその雰囲気が、
小さい子どもにも伝わってきたはずです。  
その後、田んぼでお弁当を食べている時、3歳のМくんは、みんなとおしゃべりが弾んで楽しそうでした。
そしてМくんは目の前にいるAちゃん(5歳)に「大好き!」と声高らかに言いました。小さい人から、
好きという気持ちをまっすぐに伝えられて、Aちゃんは、嬉しそうに微笑みました。
子どもは、いえ、おとなも、誰かから「大好き!」って言われたら、嬉しいですよね。Мくんの率直な表現、
好きという気持ちを伝える言葉の力は、人を支える根源のように響きました。
Aちゃんが嬉しいだけでなく、Мくんも自信満々、そんな自分が嬉しくてたまらない様子でした。  
朝のすみれぐみの話し合いで、Aちゃんが、すみれぐみの中で1番に、神さまの棒の力を借りることになったのです。
その話し合いから1時間半後、Aちゃんは、小さいМくんから嬉しい気持ちを受け取りました。
Мくんは、すみれぐみの話し合いのことは、知りません。朝の課題は、小さい子どもを助けることでしたが、
小さい子どもから受け取った気持ちが、人を助ける行動につながるのではないでしょうか。  
今日の参加者のRくん(1歳9ヵ月)とSくん(2歳9ヵ月)は、初夏を思わせる青空の下、水遊びを心から楽しんでいました。
子どもは、子どもを見ています。おもしろそうなことを見つけると、からだが動きます。
大きい人も小さい人も、水とごちゃまぜになって遊びました。こんなひとときを、一緒に過ごせて良かったです。

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ワークショップを終えて Vol.5

2018/6/5

地域の皆さんをお誘いして、もみの木園の子どもたちと1日を一緒に過ごしていただく今年度第1回目の森のようちえんワークショップを終えました。  
テーマは「子どものペースで歩こう」。舞岡公園のはらっぱ、丘、田んぼ、山道を歩いてみると、子どもは、何かに目を留めます。
そして自分で何かを始めます。子どもたちひとりひとりが自分のペースで遊べるよう、その日出会ったおとなの参加者の皆さんと、
園の保育スタッフが力を合わせて、子どものペースを知り、子どもたちの時間を支えます。そんな実践的な保育体験の取り組みでした。
子どもは、もみの木園の現在2歳から5歳の20人と、参加者の子どもたちです。今回の参加者で一番小さい人は、1歳9ヵ月でした。
参加者の子どもたちは、お母さんやお父さんと一緒ですが、朝の出会いのときから、もみの木園の子どもたちの姿に目が向いて、
一緒にいる感覚を味わっていく様子が伝わってきました。  
もみの木園の子どもたちは、この春入園した小さい子どもたちが、ようやくお母さんと離れて仲間と一緒に遊ぶ生活に慣れてきたところです。
2歳から今年4歳になる子どもたちのクラスがことりぐみ、年中、年長児クラスがすみれぐみで、2歳から5歳の異年齢の子どもたちが一緒になって遊び、子ども同士の関係が密接に感じられたかもしれません。
ワークショップのお誘い文に「春は地面から…。子どもたちの遊びも地面から始まります。」とあるように、ワークショップの4日間も、
地面から始まると実感する日々でした。ふと見ると、数人がしゃがみ込んで、土いじりが始まります。さくらんぼを拾ったり、
小さな花を見つけるのも、もぐら塚を掘ってみるのも、やってみたいことが地面にはいっぱいあるのです。
子どもたちは、地面の広がりが見えてくると、からだが動き出すように感じられます。
そして「子どもは本来、自然なもの」という人間の土台を築いていくのは、地面の上であることは間違いなさそうです。
このワークショップは年2回開催しており、今回21回目ですが、毎回参加者の皆さんが、子どもたちの時間をおおらかに見守ってくださり、
初対面でありながら連携し合えるおとな同士になれることに、子育てへの希望を感じるのです。
子どもたちを見ながら、私たちおとなは、子どもが教えてくれることが、いっぱいあることに気づかされます。
そんな気づきから、子どもたちのことをもっとよく知ることが出来るといいなと思い、毎日のことを記事にしてみました。  
子どもたちが、地域に開かれた環境で育っていくことを願って…。

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Square_wht_Right.png過去の森のようちえんワークショップ便りは以下よりご覧頂けます。

第22回 / 第21回 / 第20回 / 第19回 / 第18回 / 第17回 / 第16回 /第15回 /第14回 / 第13回 / 第12回 / 第11回 / 第10回 / 第9回 / 第8回 / 第7回 / 第6回

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