ワークショップ / NPO法人 こどもの広場もみの木

どうぞ、よろしく! vol.1

2014/6/5

今日から今年のワークショップが始まりました。
もみの木園の子どもたちにとっては、お客さんをお迎えする毎日の始まりです。
朝一番、今日一緒に過ごす人たちが、みんなで集まりました。
一組の親子が授乳のため、一足先にけやき広場の東屋へ。
集まった子どもたちが、手をつないで輪になったまま、その東屋に向かって移動し始めました。
子どもたちはつながって動くことが面白くなって、にこにこ笑顔になりました。
東屋にいたのは授乳を終えたお母さんと赤ちゃんとお姉さんのFちゃん(2歳)。
子どもたちの輪が近づいてくるのを見て、Fちゃんが自分からみんなのほうへ歩き出しました。
小さなFちゃんを迎えて今日の全メンバーが揃いました。
そして田んぼへ向かって出発。もみの木の子どもたちは、お客さんの子どもたちと手をつなぎ、
階段ではなく土の斜面を進みました。
隣にある上りやすい階段には目もくれず、わざわざズルズル滑りそうな急斜面に挑む子どもたち。
これは間違いなく子どもの自然性でしょう。
上り切ったところでテントウムシの幼虫やさなぎを見つけました。
小さい虫を懸命に探す目、じっと見つめる目が、野イバラのまわりにいっぱい並んでいました。
そのあと一足先にばらの丸橋を渡った子どもたちが、後からやってくる人たちを驚かせようと植え込みのなかに隠れていました。
こんなことは初めてでした。植え込みのなかから顔を出した子どもたちは、まるで舞台の上に立っているようでした。
その舞台の上からJPくん(3歳)が「棒でたたかうのが好きなJPくんとJYくんですって言って!」と叫ぶので、
私はその通りに伝えました。
すると「こっちはKです。Kはハートが好きですって言って!」とJYくん。
「こっちはJOくんです。JPくんとJYくんとJOくんはたたかいごっこが好きですって言って!」とまたJPくん。
ほんのつかの間でしたが、JPくんたちは自分たちを紹介しようとしていたのです。
きっと「はじめまして。どうぞよろしく!」の気持ちも込めて、自分たちのことを伝えたくなったのでしょう。
しかし自分たちだけでは心細いので、私を中継者にして…。
ここまで場所を移動しながら30分位の間に、子どもたちが共有した5つの場面
(①最初に輪になる ②子どもの輪が移動してFちゃんを迎え入れてあいさつする ③斜面をよじ登る
④テントウムシの幼虫を見る ⑤植え込みの舞台で自分たちを紹介する)がつくられていきました。
どの場面も一緒にいる子どもがつくり出したものです。
このあとも子どもたちがつくる場面が延々とつながっていきます。
一場面を切り取ってみると、子ども同士の響きあいやひとりひとりの思いが鮮明に見えてきます。
私たちはその意味を考え、明日に臨みます。


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赤ちゃんも一緒に Vol.2

2014/6/6

昨日も今日も生後5ヶ月の赤ちゃんがお母さんと一緒に参加していました。
昨日も今日も雨の中、赤ちゃんはお母さんが抱っこした上からレインコートに包まれてみんなと一緒に歩きました。
赤ちゃんはお家にいるときとは違う外気、雨粒、大勢の子どもたちの声や動き、山道を歩くお母さんの歩調も、
全身で感じ取っていたことでしょう。おやつを食べた田んぼの上屋やお弁当を食べた瓜久保の家では、
抱っこひもから開放されて支え座りした赤ちゃんが見えると、赤ちゃんが大好きな子どもたちが次々にやってきて、
しゃがんでお顔をのぞきこんだり、触ったり抱っこしようとしたり…。赤ちゃんは瞳を輝かせて子どもたちを見つめます。
赤ちゃんと目が合った瞬間、赤ちゃんが笑うと、それだけでみんなが嬉しくなります。
赤ちゃんにとって人の顔はほかの何よりも関心のある存在、喜びの源になる存在だそうです。だから笑顔が行き交うのですね。
抱っこさせてもらった子どもは、全身で赤ちゃんを受けとめて見つめます。
赤ちゃんは慣れない抱き方に、ちょっととまどい泣き出しそうになりましたが、抱き手の子どもの胸が受けとめたとたん、
落ち着きを取り戻しました。抱き手の子どもはどきどきしたことでしょう。赤ちゃんを囲んで、みんなが幸せな気持ちになりました。
赤ちゃんたち、抱っこさせてくれてありがとう!
触れ合ったからだとからだでコミュニケーションを取ろうとする…そんな感覚を味わわせてもらったのではないでしょうか。
赤ちゃんは人間の土台をつくる出発点にいる人ですから、 人と人が求め合い、かかわり合おうとすることが、とても自然なことであり、
人生の最初から自分の持てる力を発揮して生きる赤ちゃんが尊く思えてなりませんでした。  
もみの木園では昨年度、4人の赤ちゃんが生まれました。園の子どもたちは身近に赤ちゃんがいて、慈しみ可愛がり、成長を喜び合っています。
園の子どもたちも2歳から6歳の異年齢の子ども集団ですので、まだ赤ちゃんぽさが残っている人も一緒に生活しており、
ひとりひとりの違いを丸ごと引き受けていく関係を育てていくことを保育の重要課題にしています。
これは難しいことではなく、子どもが子どもの気持ちを知ることから培っていけます。
子どもにとって気持ちを想像することはむしろ分かりやすいことです。  
人と人が求め合うこと、今日も大事な場面がありました。
雨の中を歩いて瓜久保の家へ向かう道、Nちゃん(4歳)がKちゃん(3歳)と手をつなぎたいと言いましたが、Kちゃんは断りました。
きっとどうすればいいかわからなかったのでしょう。しかし帰り道、ふたりはしっかり手をつないで歩いていました。
表情も打ち解けて、お互いの気持ちが分かったのでしょう。

[追記] このワークショップでは、毎日お迎えする皆さんと在園の子どもたちのなかで一番小さい人のペースに合わせて活動しています。
ところが今回は雨が続き、雨天時お弁当を食べる場所にしている瓜久保の家までの往復をしなければならなくなりました。
舞岡公園のなかで、瓜久保は集合場所から一番遠い所で、赤ちゃんをお連れの方も長い道のりを一緒に歩いてくださいました。
この日はお便りに「赤ちゃんと一緒に」を書きたくなるほど、赤ちゃんとの触れ合いに心が動いてしまいましたが、
全日程を終えてワークショップ便りを1冊に綴ったころ、ふと赤ちゃんにとってこの1日はどうだったのだろうと思い始めました。
お母さんの荷物なら、周りにいる者が代わりに持って差し上げられますが、赤ちゃんのために最善を尽くせたか…と考え始めたのです。
赤ちゃんの個人差もあるでしょうし、その日の体調や機嫌にもよるでしょう。物言わぬ赤ちゃんだからこそ、
第一に考えていくことが欠かせないと思いました。
今回ご一緒した赤ちゃんたちの存在感は計り知れないものがあり、 赤ちゃんが子どもたちの一員としてどんな時を共有出来るのか、
新たなテーマを見出したところです。また「赤ちゃんと一緒に」の記事を書いたことから、もみの木園のお母さんたちとも
話し合ってきました。改めて赤ちゃんの暮らしを考えるきっかけになり、今も続行中です。


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私たちの願い Vol.3

2014/6/7

今日のワークショップは大雨のため中止しました。
昨日のうちに天気予報を基に決定しました。
土曜日は早いうちからお申込くださった方が多かったので、中止のご連絡をすることになり申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
しかし今朝の雨の降り方を見て、ほっとしました。悪天候はどうすることも出来ず、こんな日は休んでゆっくりやっていくしかなく、
どうぞご了承ください。  
さて今日はお休みなので、子どもたちの活動についての記事が書けません。
そこで昨日の参加者の方とお話ししたことから、このワークショップが経てきたささやかな歴史を振り返ってお伝えしてみたいと思います。  
第1回は2007年にさかのぼります。当時私たちが地域に貢献できることとして、自然のなかで子どもを育てる保育のあり方を紹介し、
子育て世代が自然のなかで出会い交流する場をつくることを考えました。この頃、全国的に「森のようちえん」が注目され始めたこともあって、このワークショップにも大勢の方が参加してくださり、年1度(全5日間)だった開催を年2度にして対応してきました。
毎年開催するに当たり、このワークショップの役割を考え、私たちに出来る地域貢献の内容を絞っていきました。
これまでテーマにしてきたことは<子どものペースで歩こう><子どもと楽しみ子どもを知る>そして前回より<森で子どもの内なる自然を見つける>とテーマを立てて「子どもにとって」という視点を深めていこうとしています。
近年子育て支援事業が各地で取り組まれていますが、親支援に偏っていることが気掛かりでした。
親の傍らにいるのではなく子どもが主体の活動にするには、子どもが自分から遊ぶことが何よりも大切です。子どもは子どもを見ています。
もみの木園の子どもたちが遊ぶ姿を見て、子どもたちが遊び始めるといいな…。
もみの木園の子どもたちは、自分たちの遊び場にやってきた子どもたちを誘って遊びが生まれるといいな…。
なにしろ遊び場は舞岡公園ですから、自然の中で子どもが何かを見つけることから始まります。
子ども自身の目で、手で、からだで受け取ったもの(こと)をみんなで喜び合えるといいな…。
子ども主体の活動は、遊びを通して子ども同士の共感が生まれます。
そんな子どもたちの時間を大人の私たちも共有出来るようなワークショップであるように願って、今回で13回目となりました。  
やり続けてみて、毎回子どもたちがよく遊び、1日の流れのなかで一緒にいることが嬉しくなり、
野の遊びを楽しんでいる様子が伝わってくるのです。
初対面であっても子どもたちはちゃんと人との関係を築こうとします。この実感が継続の原動力となっています。


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だんだん分かってきた Vol.4

2014/6/9

月曜日、後半のワークショップの始まりです。
今日はやっと雨も上がり、レインコートなしで集合です。(でもリュックの中にはレインコートが入っていますが…)  
もみの木園は現在2歳から5歳の子どもたちが一緒に生活しています。
一番上のもとすみれ(年長組)の3人は小さい頃からワークショップを何度も経験してきましたが、昨年までは上の人たちが
リーダーシップをとってくれていたので、きっと大きい人についていけばよかったのでしょう。
今回は年長組になってはじめてのワークショップで、実は前半の2日間、3人はどうすればいいのか分からないような様子でした。
ところが今朝はHちゃんとJOくん(5歳)、手をつないでふたり一緒に「みんな、集まって!」と大きな声で呼びかけました。
あいにく、もうひとりのSくんは熱でお休みだったのですが、きっとワークショップでの自分たちの役割が分かってきたのでしょう。
Hちゃんが久しぶりに会えたYちゃん(5歳)に「同じ年だから、Sの代わりに一緒にやってほしい」と言いました。
今日、遊びに来てくれた子どもたちともみの木園の子どもたちのことを見渡して、年長同士が協力してやろうと思ったのでしょう。
今日になって発想力が動き出したようでした。  
このワークショップはお休みをはさんで5日間継続することから、子どもたちが日常と違う取り組みに対して、
だんだん分かってくる様子が見えてきます。
年長組がこうですから、もっと小さい子どもたちは、まだよく分からないままかもしれません。
それなのに、子どもたちは一緒に急な斜面を上り、アリの行列を見つけると踏まないように教え合い、
木登りに誘ってもみじの木に子どもがたくさん登ったり、もじゃもじゃの毛虫が動くのをじっと見つめ、
誰かが黄緑色の可愛い柿の実の赤ちゃんを拾ってくると、「自分も!」と次々に探しにいったり、長いミミズを囲んで見たり…
みんながわくわく楽しい気持ちをふくらませていきました。
何といっても今日のハイライトは、土手で大きなアオダイショウを見つけたこと。アオダイショウが動く方向に、
土手を見上げて子どもたちが一列になって動くのです。ドキドキ緊張感が高まり、子どもたちの表情は真剣そのものでした。
ヘビと別れたあと、大きな達成感に包まれて足取りもたくましく感じられました。  
お弁当のあと、思い思いに始まった泥だんご作り。みんなが地べたにしゃがみ込んで、泥だんごを作っています。
だんご作りに最適な粘土質の土が分かったのでしょう。いくらでも遊べる子どもたちです。
帰り道、ヘビマンションで、またアオダイショウに会いました。
子どもたちは、いつの間にか一緒にいるのが極々自然になり、様々な思いを見せ合えるようになっていきました。


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子どもの内なる自然 Vol.5

2014/6/10

ワークショップ最終日。今日はおおなばの丘へ。
子どもたちは、普段よく遊んでいるチョコレートやさん(土をこねていろんなチョコレートを作ります)をやろうと向かいました。
いつもの場所に行くと、辺り一面、さくらんぼの実がいっぱい落ちていて、チョコレート屋さんは、ぶどうアイス屋さんに変わっていました。
子どもたちが数人で囲める大きさの石の上では、小枝でさくらんぼの実をつぶす作業が続いていました。これがアイスになります。  
一方、桜の木では木登りが始まっていました。大きな桜の木の横に伸びた太い枝にまたがって枝の先まで進みます。
アイス屋さんと木登りする人たちは、行き来があってお互いに関係し合っています。アイス屋さんにいたKくん(3歳)は、
自分がもっている枝には「火」が蓄えられていて、この枝で木登りしている人たちを助けてくると言って桜の木に向かいました。
そうして、みんながまたがって慎重に進む太い枝のこぶに、自分の枝の先を差し込んでじっとしています。
まるで自分の枝の「火」のエネルギーを注入しているかのようです。
「みんなを助けてきた」とKくん。
実は先週、森の保全の仕事をするおじさんが新しい丸太の杭の表面をバーナーで焼いていました。
Kくんは長い管から炎が出るのを見続けました。
その光景が忘れられなくなったようで、この1週間、ちょうどいい枝を見つけると「この中に火が入っているの」とよく言っていたのです。
Kくんが空想し続けた「火」が今日はみんなを助ける力を持っているものになっていました。
子どもの空想が1週間の経過の中で、「火」を「エネルギー(力)」と置き換えていることに気づきました。
このように子どもは自然界のことを勘で分かっていくことが、いっぱいあるのだろうと思えてきます。
このことからも幼い時代は、勘をたっぷり働かせて勘を頼りに試行錯誤を重ね、内なる自然性を潤してほしいと思いました。  
Kくんが桜の木にエネルギーを注ぎ込んだ直後、Nちゃん(4歳)が生まれて初めてこの太い枝の先端まで到達しました。
出発点から時間をかけて最後を上り切るとき、両足で枝をはさんでからだを押し上げるために、とっさに靴と靴下を脱いだそうです。
恐さに打ち勝ったNちゃんは、静かで穏やかな表情でした。
木登りは自分のからだを木に添わせて持ち上げていくために、自分のからだの感覚をフルに使ってバランスを取り、
落ちないようにからだを保ちます。
子どもはひとりで木に挑んでいるのですが、すぐそばで見守るおとなを信じ、先に登った友だちの姿を見ながら、
自分の未知の力を拓いていくのです。自然に対して働きかけると、必ず自然から返答があります。
子どもが全身で感じ取っていることに、私たちおとなも気づいていければ、どんなにいいでしょう。


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