ワークショップ第11回 / NPO法人 こどもの広場もみの木

森のようちえんワークショップに向けて vol.1

2013/06/03

今日から始まる森のようちえんワークショップは足掛け7年、11回目になります。主催するもみの木園はこの春、創立16年目を迎えました。園舎を持たず、子どもが育つ地域の人々と自然との結びつきを大切にして保育活動を進めて来ました。最初は、こんな幼稚園があることを地域の皆さんに知っていただきたくて始めたワークショップでしたが、回を重ねるごとに子育てのテーマに取り組むようになりました。子どもは生まれたその時から、大人の文化の中で育ちます。そして子どもは大人の支えなしには成長していけない存在だから、子どもが育つ環境をどう拓いていくかという課題に取り組むことは、園舎を持たず地域の真っ只中で子どもたちを育てている私たちの使命であると考え、このワークショップを積み重ねてきました。変わらぬテーマは「子どもに学ぶ」「子どもを知る」ということです。自然の中を歩きながら子育てのことを考える、子どもたちの姿を見ながら子どもを知り直す…そんな毎日を皆さんとご一緒に楽しみたいと思います。

皆さんをお迎えするもみの木園の子どもたちは現在19人。年齢構成は2歳5人、3歳3人、4歳6人、5歳5人です。この春仲間入りした子どもたちも、もうすっかり肩を並べて暮らしています。今年のメンバーの特徴をひとつお伝えすると、いたずらぼうやたちがそれぞれ取って置きのかっこいい枝を手に持って、毎日戦いごっこを繰り広げています。戦いごっこは相手がいる遊びです。追いかけたり、取っ組み合ったり、お互いに相手の反応が面白いのでしょう。どちらかが泣くと、とたんに戦いは終わり、困った顔、訴える顔が見つめ合い、あちこちから「どうしたの?」とみんながやってきて、今のところ年長組の強いリーダーはいないのですが、みんなで考えて、それぞれが自分の判断したことを伝え、じわじわと子どもたちなりの秩序が生まれ始めています。当事者同士はみんなに入ってもらって、お互いに気持ちが治まるのを待っているうちに、にっこり笑ってまた遊び始めます。戦いごっこと仲直りを何度も繰り返し、親しくなっていくようです。聞いてみるとお互いに相手が好きなんですって。ワークショップ期間中も、戦いごっこが始まるのでしょうか。


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いつもの一日 Vol.2

2013/06/04

今年のワークショップ初日、朝やってきた子どもたちを見ると、いつもより少し張り切っているような様子でした。また今日は、小学校の運動会の代休で、4人の小学生が遊びに来てくれて、今日一緒に過ごす人たちが賑やかに集まりました。
お迎えした参加者の子どもたちは、3人ともちょうど2歳になる頃で、いいお顔で出会えました。もみの木園の大きい子どもたちと小学生は「ザリガニ釣りに行きたい」と口々に…。「小さい人たち、かっぱ池まで歩けるかな」と言いながら、まずは田んぼへ向かいました。歩き始めると、いつものような子ども同士のかかわり合いが見られ、歩く姿はむしろ堂々と感じられました。きっとお客さんをお迎え出来て嬉しいのでしょう。
田んぼに着くと、あぜ道を連なって歩きます。あぜ道は子どもたちにとって一年を通して「ここで育った」と言えるほど大事な場所です。あぜ道の脇を流れる小川も、素通り出来ない大事な場所です。今日もここで思い思いに遊んで、小学生たちの願いを受けてかっぱ池へ行くことにしました。道々、柿の実の赤ちゃんを拾ったり、生い茂る草の前で何かがいるような気配を感じて立ち止まって見たり、思い思いに歩むので、先頭と最後がずいぶん離れてしまいました。瓜久保の家で全員が落ち合って、いよいよかっぱ池へ…。今日は小学生がいるので、たちまち大きなザリガニが釣れました。それから次々と釣れ始め、楽しいひとときでした。
お弁当は瓜久保の家で、子どもも大人も体を寄せ合って食べました。そしてあっという間に帰る時間に…。子どもたちの何人かが、帰り道でやりたいことを言いにきました。「へびマンションに行こう。今日はへびに会えるかな」「へびマンションの近くのすべり台で遊びたい」「さくらなみ池に寄りたいな」…帰り道に、まだまだやりたいことがいっぱいあるのです。だからたっぷり時間をとって帰って行きます。でもやりそこなったことは、また明日。小学生は今日しかないので、帰り道を惜しむように歩き「今日は楽しかった」と何度も言っていました。
さくらなみ池から森の道に向かうとき、途中にある「神さまの木」が怖いKoくん(2歳)は一度は嫌がったのですが、私と手をつないで歩き出しました。そして神さまの木の前に初めて立ち止まり、一歩近づいて木を見上げました。私が「Koくんです。どうぞよろしく!この前、Koくんの家に赤ちゃんが生まれました。赤ちゃん、元気ですよ」と木に話しかけると、Koくんも「赤ちゃん、げんき」と木に伝えました。この1ヶ月をかけて、Koくんは怖さを乗り越えてきたのです。 

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まだ遊んでないのに Vol.3

2013/06/05

まずは昨日も今日も皆さんにお伝えし忘れたことから。朝、子どもも大人も輪になって、ひとりひとりの名前を呼んで出会う場面でのこと。そのとき子どもたちの紹介はしましたが、もみの木園の保育スタッフを紹介しないで過ぎてしまいました。
もみの木園の保育者は大西と尾上の2名。他にもみの木園を卒園した子どものお母さんたちが、毎日ふたりずつ保育をサポートしてくれています。卒園生のお母さんたちは、自分の子どもが小学生、中学生、中には高校生になった人もいます。ワークショップだからではなく一年中、いつも卒園生のお母さんたちの支えがあって、保育が成り立っているのです。在園の子どもたちにとっては、以前いっしょに過ごした仲間のお母さんたちであり、子どもから子どもへと縁がつながっています。初日に小学生が遊びに来ましたが、大きくなった子どもたちが、兄弟でもない小さい子どもの手を引いて山道を歩く姿は、たいへん微笑ましく頼もしくもありました。子どもたちにとって、幼いときからずっと自分のことをよく知っていてくれる人が沢山いることが、社会生活への安心感を育てていくのではないでしょうか。

さて今日は田んぼへ向かうとき、珍しくさくら休憩所でひと遊びしました。途中ですみれぐみ(年中・年長の合同クラス)が作った梅ジュースを飲んだり、トイレに行ったり、時間がゆっくり流れていました。「かっぱ池まで遠いから今日は行けそうにないね。今日は田んぼまででいいね。田んぼでゆっくり過ごそう」と子どもたちに伝えると、Hiちゃん(4歳)が「まだ遊んでないのに…」と不満そうにつぶやきました。しかし門の脇の分かれ道に差し掛かると、とたんに張り切って「こっちから行く人、いい?一列に並んでね。ようちゃんバイバイ。」と言って、みんなでわいわい行ってしまいました。そして門の向こうにいくと「やあ!」「やあ!」と輝く笑顔で面白そうに出てきた子どもたち。門のこちらにいる人たちも「やあ!」と応えます。これだけのことなのに、すごく楽しいのです。この楽しさを味わって、ちっぷさんの木の方へ。ここではTaくん(5歳)がこの木について説明していました。さくら休憩所でも門でもちっぷさんの木でも、まだ遊んでないのでしょう。しかし私には遊んでいるときと同じくらい、子どもたちの心が動いているように感じられます。その後田んぼでは、まさしく「遊び」が展開しました。あぜ道をかけまわり、小川を覗き込み、泥んこになって水遊びもいっぱい…。子どもたちにとって「歩くこと」と「遊ぶこと」は違うことなのでしょう。でも歩きながら面白いことが次々と起こります。  

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響きあう子どもたち Vol.4

2013/06/07

今日も晴天。夏が近づいた森は日差しも強くなり、子どもたちは自ずと水場へ向かいました。今日参加の子どもたちは1歳後半から2歳台の4人。水を見れば心が動き出します。みんなが次々と水遊びを始めました。一方、木登りを始める子どもたちもいました。おおなばの丘の大きな桜の木は、横に伸びた太い枝にまたがって枝の先端へ向かうのですが、もみの木園の子どもたちも今年度初めてです。年長組のTaくん(5歳)が登り始めました。続いてHaちゃん(5歳)、Miちゃん(5歳)もやってきました。子どもは子どもを見ています。小さい子どもたちも「自分も!」と太い幹にしがみつきます。みんな登ろうとする気持ちが満ちあふれているのです。初めてのRくん(2歳)もお母さんに持ち上げてもらってまたがりました。堂々とした姿でした。TaくんもHaちゃんも昨年度は出来なかったことに、新たに挑戦。その様子を下から見ていたMaちゃんが「Haちゃん、がんばれ!」とピョンピョン跳ねて一生懸命声援を送ってくれました。まだ小さいのに人を励ます気持ちを全身で表現するMaちゃんから力をもらって、Haちゃんはとうとう生まれて初めて先端まで到達出来ました。
お弁当のときのこと。もみの木園の子どもたちがみんなでくっついて原っぱにお弁当を広げると、Rくんも「いれて!」とその輪の中に入りました。初めての場所なのに「みんなの輪の中に入りたい、ぼくも一緒に!」と思うとすぐに行動を起したRくん。子ども同士が響きあっているのが伝わってくるようでした。お弁当のあと、子どもたちはまさに響きあいっぱなしでした。今日2度目の水遊び、服をどんどん脱いでやる気満々の子どもたち。前に広がる田んぼのあぜ道を駆け回る子どもたち。特に参加者の中で一番小さい1歳9ヶ月のFくんが駆け出すと、Fくんを先頭に子どもたちが連なり走る走る…。Fくんが先頭なので、みんながFくんに合わせて走ります。それが響きあう遊びなのです。あぜ道は田んぼをぐるりと回って戻ってくることが出来るので、ひと回りする度に「あー、おもしろい!」とみんなで喜びあいます。そしてまた駆け出します。Fくんはまだ足元もおぼつかないのに、絶妙なバランスを取って転ばないで体を弾ませて走っていました。おそらく自分の持てる力を上回るエネルギーがみなぎっていたのでしょう。
今回初めて出会ったKちゃんは今日が3歳のお誕生日でした。朝出会ったときと帰り道を歩く表情が、全く違って見えました。ひとつ大きくなった瞬間を見せてくれたようでした。 



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ひとりひとりの思い Vol.5

2013/06/08

昨日はお休みして今日はワークショップ4日目。今回初めて雨の予報。みんなレインコートの仕度で集まりました。雨のときは瓜久保の家でお弁当なので、月曜日以来一番遠くまで歩く日です。さっそく出発しました。階段があっても脇の斜面を歩く人たちがいます。どこでも歩けるのはいいなと思います。。Kちゃん(2歳)と手をつないだSくん(4歳)は、迷うことなく斜面に向かいました。Kちゃんも大きく一歩を踏み出しましたが、片足がすべり即座にSくんがつないだ手で持ち上げました。さらにKkくん(4歳)がKちゃんのもう片方の手をつないで助けにきました。Kちゃんは何も言いませんが、安心してふたりの助けを受け入れています。
ばらの丸の丘まで行くと、泣き声が聞こえました。今日参加のHくん(3歳)がお母さんに抱っこしてもらいたいと泣いています。お母さんは1歳7ヶ月の妹のKhちゃんを抱っこしているので、Hくんを抱けません。2度目の参加ですが、緊張している様子でした。他の子どもたちもはHくんの気持ちが分かります。ここを乗り越えて田んぼにつくと、だんだん体が動き始め、やわらかい表情になっていきました。もうひとりの参加者のTくん(3歳)も田んぼでおやつを食べたら、みんながTくんの周りに集まってきて、短くきれいに刈られた頭を「触らせてくれる?」とお願いして代わる代わる撫でて「気持ちいい!」とみんな。触れ合って一緒に嬉しくなって、打ち解けていくのが分かりました。
雨の心配もなくなり、何と言ってもかっぱ池でのザリガニ釣りは今日のハイライト。先ほどのHくんは、お母さんから離れて釣りに挑みました。子どもたちに案内されて河童の像も見に行きました。そのときのHくんは、子どもたちのひとりひとりを見て一緒に駆けて、わくわくしているのが伝わってきました。初めてのザリガニに「こんにちは!」と挨拶するHくん。お母さんと離れてひとりで立って自然に自分の表現が出来て嬉しそうでした。Tくんもザリガニを、大きいのと小さいのを2匹持って帰りたいと自分の意思を伝えてくれました。ひとりひとりの思いが表れるときが人との関係が始まるときです。帰り道でJくん(2歳)がTくんに石を投げました。それを泣いて自分で訴えたTくん。Jくんは気まずい思いで戸惑いました。そして自力で「もうしない」と言いました。これが彼の精一杯でした。その後、JくんはTaくんが後ろについて、大好きな汽車ごっこをしてもらって気持ちを立て直していきました。朝9時から午後1時30分まで、一緒にいる子どもたちひとりひとりの数え切れない思いが行き来して1日がつくられていきます。 



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続けること・つながること Vol.6

2013/06/08

ワークショップ最終日も天気に恵まれました。今日もまずは田んぼへ。ワークショップに参加してくださる方たちに、舞岡公園の田んぼはどうしても見ていただきたくて5日間欠かさず田んぼへ行きました。今日は皆さんともみの木園の田んぼのあぜ道をひとまわりしました。もみの木園の子どもたちも田植え以来、18日ぶりに自分たちの田んぼに近づきました。「オタマジャクシがいる!」「アメンボがいる!」と嬉しそうな声…。子どもたちが植えた苗もしっかり根づき始めたようです。あぜ道に子どもも大人もずらりと並んで田んぼの中を覗き込み、田んぼを渡る風が気持ちよくて楽しいひとときでした。そして今日も田んぼからかっぱ池へ。遠い道のりをよく歩きました。かっぱ池では参加者の皆さんが、子どもたちのために釣り竿づくりに力を貸してくださって、皆さんの一生懸命さが子どもたちに伝わって、安心感に包まれているように感じました。
今日もいろんな方たちと出会いました。舞岡公園はいろんな世代の方たちが集う場所です。もみの木園は日常的に舞岡公園にやって来るグループの中では一番小さい世代でしょう。大人の方たちは農作業や谷戸の保全活動に勤しむ姿を、いつも見せてくれます。生き物を観察する方たちは、よく鳥や虫の話を聞かせてくれます。
子どもたちはまだまだ幼くて何もかも未知のことばかりで、大人と同じことは出来ないのですが、それでも舞岡に集う一員としてやってきて、野山で遊び田んぼに通い、出会う方たちに「こんにちは!」とあいさつして、だんだん親しくなっていきます。今、子どもたちが見て触れていることが「社会」なのです。子どもたちにとって舞岡公園での毎日は、自然の中に位置づく社会生活とも言うべきものです。
ここ数年来、子どもたちと共にある保育という仕事を通し、子どもたちこそが地域社会の連帯の主役なのだと思うようになりました。子どもが人として尊ばれる社会になっていくよう、ひとりひとりがやるべきことをやっていくために、子どもの自分自身を育てる力や子ども同士が互いを育てあう力、遊びを生み出す力を知っていくことが、欠かせない要件だと思います。それらは知れば知るほど、人生を豊かにしてくれるものではないでしょうか。




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