ワークショップ / NPO法人 こどもの広場もみの木

はじめに Vol.1

2016/11/17

今年2度目の森のようちえんワークショップを開催します。
前回は6月、夏に向かう生命力あふれる季節に舞岡公園で皆さんをお迎えして、もみの木園の1日を体験していただきました。
季節は移り変わり、今回は実りの秋を過ぎて冬へ向かう季節に皆さんと一緒に舞岡公園を歩きます。
このワークショップは、地域の皆さんと子どもたちの姿を見ながら一緒に楽しんで「子どもが自然の中で育つ意味」や
「子どもは本来、自然なもの」という人間の土台について、皆さんで気づきあえることを大切にしたいと思います。
テーマは「子どものペースで歩こう」です。子どものペースとは、ただ単にゆっくりということではありません。
ひとりひとりが自分で遊びを見つけていくペース、興味をもったことを繰り返し確かめていくペース、
自分のことをやっていくペースなど、ひとりひとりのペースに違いがあるということが自然なことであり、
ひとりひとりの違いを尊重してつくる子どもたちの活動のあり方に視点を合わせていけるようにと思っています。  
ひとりひとりのペースを重んじる活動とは、つまり個人を尊重することの基点です。
どんなに小さくても尊厳ある個人として出会い、お互いに一緒に過ごす間柄になることが、何よりも大事なことだととらえています。
明日からのワークショップの毎日、子どもたちを見ながら考えたことなど、小さな記事を綴ってみようと思います。
ではどうぞよろしくお願いします。

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子どもが見せてくれること Vol.2

2016/11/18

今日から森のようちえんワークショップのはじまりです。
参加者の皆さんが揃ってもみの木園の子どもたちと顔合わせ。
今日一日、一緒に過ごすお互いがよく見えるように集まりました。
ひとりひとりの名前を呼ぶと、ひとりひとりにスポットライトが当たり、表情が何かを語り始めます。
子どもたちは〝自分〟を表明して、集まったお互いを見ながらこの場で〝特別な気持ち〟を抱いているように感じました。
初対面でありながらも出会った子どもたちが、まずお互いに「一緒にね」と思い合う力を持っていることが伝わってくる
ような〝場〟でした。ここで、J(6歳)から「おおなばの丘で少し遊んでから田んぼに行こう」と提案がありました。
口々に「いいよ!」と声が上がり、リュックを背負って動き始めました。
もみの木園の子どもたちは、舞岡公園での様々な遊び方、過ごし方を知っています。
まだ頭の中に地図は描けなくても〝おおなばの丘〟〝田んぼ〟とか遊びを生み出した場所を記憶しています。
そこを目指して歩く道でも道草いっぱい、思いついたこと、やるべきことをひとつひとつやりながら進みます。  
今日は小春日和、おおなばの丘の桜の木に登りたかったのですが、ヨコヅナサシガメがいたので断念しました。
この判断をするまでに子どもたちは長い時間、隅々まで木を見つめていました。石垣の上からジャンプする子どもたちは、
何度も繰り返しながら自分の跳び方を変化させていきました。草むらに入り込んでムカゴ取りに夢中の子どもたちもいました。
どのことも、子どもがやり切るための十分な時間が必要です。
この子どものペースを知ることが、育てる私たちに課せられていることではないでしょうか。  
今日の参加者の中で一番小さいTくん(1歳7ヵ月)は、自分の目の前に広がるものをひとつひとつ探索し、
確かめるために何度も行ったり来たりし〝やるべきこと〟をやり続けていました。まだおぼつかない足取りも、
ほとばしる思いが全身を支えているかのようにバランスをとってぐんぐん進みます。
N(6歳)とM(5歳)が小川や田んぼに落ちないように追いかけますが、「落ちそうだけど落ちない!」とお姉さんたちは
感心するばかりでした。 子どもたちは、思いついたことを自分でやってみなければならないのです。
これこそ子どもの自発性が育つ原動力です。何もかもが生まれて初めての子どもたち、この世界を自分でつかむためにひとつひとつ
確かめていく姿は真剣そのもので、充実感に満ち満ちて見えました。人は皆、こうして人生を歩み始めるのだと子どもたちが
見せてくれているのです。帰り道、葉っぱや小石、水を入れてしばったビニール袋や枝を手に持って歩く子どもたち。
疲れて歩みはのろのろ、大きい子どもが小さい子どもを助けてみんなで歩き切りました。

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雨の日も Vol.3

2016/11/19

今日は雨でした。早朝より降り続ける雨の中で集まった、今日の参加者の皆さんともみの木園の子どもたち。
けやき広場のあずま屋で雨具を着て出発の準備をしていると、身支度の出来た子どもたちが、目の前に広がる原っぱに
向かって行きました。そこには大きな水たまりがありました。ひるむことなく水たまりに突進、降りしきる雨の中、
バシャバシャと水しぶきが上がり、次々と向かう子どもたちも水たまりの中に。もみの木園の子どもたちは、雨の朝、
ここでこんなスタートをよく切ります。久しぶりにお会いした参加者の子どもたちや初めて参加の子どもたちも、
水たまりに惹きつけられています。雨の日のワークショップの開催をどうするか、毎回頭を悩ませており、
今日も参加者の皆さんのことが心配でした。このワークショップも18回目となり、継続する中で貴重な気づきが
積み重なってきたのですが、近年雨の心配が増してきたのはどうしてだろうと自問しているところでした。
しかしこの水たまりの子どもたちを見たとたん、心配が吹っ飛びました。もみの木園では、台風のような嵐でない限り
雨の日も野外で活動します。子どもたちがその方針に則っていいのだと、力強く教えてくれているように感じました。
水たまりのおかげで子どもたちの今日の活動が動き始めたと思ったら、いつの間にか小雨になり、そのうちに「雨がやんだ!」
と口々に子どもたち。歩きながら変化を感じ取って伝えあいます。昨日は青空の下、もみじの紅葉に心を動かしたのですが、
「もみじは今日の方がきれい!」とも言っていました。薄霧の中の赤や黄色が落ち着いた色に見え、その色合いがきれいだ
と思ったのでしょう。 子どもたちは歩きながら、よくしゃべってとても賑やかです。手をつなぐ相手と気持ちがすれ違うこともあります。
手に持っているもの(枝や石など)をめぐって問題が起こることもあります。起こっていることに、子どもたちみんなが当事者
としてかかわろうとし気持ちを伝えあいます。だから賑やかなのでしょう。まだ小さい子どもたちも、賑やかな声に包まれて
一緒に心を添わせて歩みます。そんな子どもたちの行動のしかたが、私は大好きです。  田んぼの上屋でおやつを食べて瓜久保の家へ。
今日は遠くまで歩きました。瓜久保の家は、雨の日にお弁当を食べる場所です。すでに雨はやんでおり昼食後は外で
〝だるまさんがころんだ〟が始まりました。最初は大きい人たちが始めたのですが、次々と小さい人たちもその遊びに入ってきました。
ルールを知らなくてもまったく問題はありません。大きい人たちについているだけで嬉しくて、からだが動き出しました。
大きい人たちも自然に増えていく小さい人たちを丸ごと引き受け一緒に遊びました。
今日の参加者の中で一番小さいKくん(1歳)も地面にお座りしてご機嫌で、遊んでいるみんなを見ていました。
雨上がりの午後、遊び心が響き合って、子どもたちがつくった楽しいひとときでした。

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子どものつくる世界 Vol.4

2016/11/21

子どもへの興味がつきないのは、すべての子どもが、私たちおとなとはまったく違う世界を持っているからです。
その世界は子ども同士でいつでも共有し合えているようですが、おとなはそうはいかない。
そばにいて、その世界が見えたような気がしても、とらえるおとな自身の主観をくぐっているので、見え方は〝ホンモノ〟
ではないかもしれない。しかし毎日、ひとりひとりの子どもが放つ面白さをキャッチしていけば、子どもの世界に近づける
かもしれません。このワークショップのお誘い文にも「おとなの私たちは、子どもたちがつくる世界に誘ってもらいましょう。」
と呼びかけました。子どもの世界に近づき、子どもをもっとよく知るためです。 子どもは今ある力で、自分(たち)の世界を
築いていくことが出来ます。毎日、やるべきことをしっかりやっていきます。たとえば今日は、すみれぐみ(年長・年中組)が
田んぼから栗山へ大きいことりぐみ(年少組)を連れて行きました。すみれぐみの子どもたちが今、子どもだけで行けるように
なった山です。年少組の子どもたちにとっては、未知の山です。すみれぐみはやる気をみなぎらせ、大きいことりぐみは
すみれぐみに惹きつけられるように、残った小さいことりぐみやおとなたちに「いってきます!」と手を振って出かけて行きました。
細い山道を登っていく子どもたち。あっという間に姿は見えなくなり、それからは子どもたちの声だけがずっと響き渡っていました。
聞こえてくる声だけで遊んでいる様子が分かりました。 下の私たちは、お客さんをもみの木の田んぼに案内したり案山子を見たり、
あぜ道で過ごしてお弁当にすることにしました。栗山の子どもたちにも戻ってくるよう伝える方法を考えながら山の入口に向かうと、
さっきまでずっと聞こえていた子どもたちの声が突然聞こえなくなったのです。「どうしたのだろう?」と栗山に登ろうと
一歩踏み出したら、子どもたちの賑やかな声が上から近づいてきたのです。さっきは、山をひと回りして一時声が聞こえなく
なったのでしょう。大きいことりぐみの子どもたちも「遊んできた!」と意気揚々と戻ってきました。田んぼの上屋で「ただいま!」
「おかえり!」と言葉を交し合ってお弁当のしたくに取り掛かりました。  
またこんなこともありました。小川を飛び越えて遊んでいるうちに、あぜ道の際の土を蹴って崩してしまいました。
それを直そうと川に入った子どもたち。緊張が伝わってきました。注意深く一歩一歩足元を確かめながら、そして崩れ落ちた土を
何とかしようと懸命でした。川に入る人を上から見守る人たちも真剣でした。 栗山で子どもだけで過ごしたこと、小川に入ること、
どちらもささやかなことではあるのですが、子どもたちが今持っている力を総動員してやり遂げたことに、大きな意味を見出しています。
こうして日々子どもは、自分(たち)の世界を築き広げていくのでしょう。
その世界に私たちも誘ってもらえますが、おとなの手中にはなりません。

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子どもが必要としていること Vol.5

2016/11/22

昨夜の雨で、けやき広場には今朝も大きな水たまりが出来ていました。
今日はたったひとりAr(3歳)だけが裸足になって水たまりで遊び始めました。
保育者がひとりついてArが十分に遊び切れるようにして、他の人たちはすぐ隣のおおなばの丘に先に行くことにしました。
おおなばの丘の桜の木、サシガメが怖くてずっと登れなかったのですが、今日は思い切って登り始めた子どもたち。
なだらかな丘のあちこちで、子どもたちが思い思いに過ごしています。参加者の子どもたちも、自分で行きたいところへトコトコ歩き、
まわりにいる子どもたちに興味津々の様子。みんな自由に過ごしていました。心が動くことに向きあう時間をいつも大事にしています。
Arも合流し、この丘で遊び始めました。少し遅れてKa(2歳)がお母さんとおじいちゃんに連れられてやってきました。
みんなと出会った瞬間にKaは行動開始。9月に2歳になって入園したのですが、もう十分に園生活を自分のものにしています。  
今日もおおなばの丘から田んぼへ向かいました。田んぼに少し遅れて到着した参加者のKoくん(1歳7ヵ月)、
お母さんに抱かれてやってきたそのお顔が満足そうに輝いていました。18日のTくん(1歳7ヵ月)もやりたいことが十分に出来ると
必ず次に進み、みんなのところに満ち足りた表情でやってきました。遅れることなんて、まったく問題ありません。
みんなで待っていたっていいのですが、ひとりでやり切ることの方が必要なこともあります。ひとりひとりが必要としていることを、
読み取れるようになりたいです。 今日〝子どもが必要としていること〟について改めて気づいた場面がありました。
田んぼからの帰り道、ばらの丸の丘に登る山道の階段で、Ay(3歳)が泣き出しました。AyはTt(2歳9ヵ月)と手を
つなぎたかったのですが、H(3歳)と手をつないだTtが断ったのです。断られて泣き出したAy、それだけでなくTtとHが、
階段をどんどん上がっていくのが見えて、Ayは身を投げ出して激しく泣きました。私はAyより下にいたのですが、TtとHが
遠のいて行くのを見ながら、たまらなく切なくなりました。Ayが置き去りになったという思いが募り、何とかしなければとAyの
ところへ行き、上に行ってしまったふたりを呼びました。ふたりは戻ってきました。そしてAyとふたりが向き合った瞬間、
Ttの手とAyの手がつながり、Ttのもう一方の手はHとつながったまま、3人で一緒に歩き始めました。言葉はいりませんでした。
ふたりも、あれでいいとは思わなかったはずです。しかしふたりには自ら戻る力はなかったのだと思います。
だからAyの元に戻ってやり直すことを手助けしなければならなかったのです。
これが〝子どもが必要としていること〟だったのではないかと今も考え続けています。

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