ワークショップ / NPO法人 こどもの広場もみの木

はじめに Vol.1

2016/5/26

2016年度、今年も森のようちえんワークショップを開催します。
まずは夏に向かう生命力あふれる季節に、舞岡公園の自然を感じてもみの木園の子どもたちと1日を過ごしていただきます。  
皆さんをお迎えするのは、2歳から6歳の20人の子どもたちです。子どもたちの集団は一番小さい人を真ん中にして、
大きい人たちが小さい人を助けながら、ひとりひとりのペースを重んじて活動しています。
4月に入園した2歳の4人の子どもたちもすっかり慣れて、みんなとよく遊んでいます。  
子どもたちは遊びを中心にして自分たちの1日をつくっていきます。おそらく子どもたちは〝1日をつくっている〟
という自覚はないと思います。しかし子どもたちと1日を過ごしてみると、自分たちでいろいろ考え、
気持ちのやりとりをいっぱいしながら遊び込んでいく様子から、子どもは自分でやっていく力を相当持っていることに気づきます。
心ゆくまで遊んだ子どもたちの姿を思い浮かべてみると、その意味をもっと知りたいと思います。  
今回のワークショップのテーマは<子どものペースで歩こう>です。5年前のワークショップでこのテーマを立てました。
その後<子どもと楽しみ子どもを知る><森で子どもの内なる自然を見つける>とテーマを通して、ワークショップで
出会う皆さんたちと一緒に考えたり、気づいたことをもっとよく確かめてみる指針にしてきました。
そして今年、この4月より子どもたちひとりひとりの歩むペースを強烈に感じる日々を過ごしているうちに、
再び原点に戻ろうと思ったのです。5年前のワークショップ便りに次のような一文がありました。
「子どものペースを尊重するとは?幼児期とはどんな<とき>なのでしょうか。子どものペースで一緒に歩いてみましょう。
ついでに自分のペースも確かめるチャンスになるかもしれません。」  原点の問いです。今回お会いする皆さんと一緒に、
毎日、子どものペースを感じ取っていけたらと思います。そして新たに気づいたことを、皆さんと共有し合えたら嬉しいことです。  
5月18日にすみれぐみ(年中・年長組)の子どもたちが、舞岡公園に隣接する〝かねこふぁ~む〟の小梅でジュースを作りました。
ちょうど一週間で出来上がり、今日は子どもたちみんなで味見してみました。ひと口飲んで「おいし~い!」「サイコー!」と
歓声が上がりました。ワークショップのお客さんたちに、毎日ご馳走できるのが楽しみです。  
保育スタッフは尾上陽子、大西小百合のふたりと、もみの木園を卒園した子どもたちのお母さんたちが毎回ふたりずつ
保育サポートとして4人体制で担当します。どうぞよろしくお願いします。 (5月26日 尾上陽子)

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共感がいっぱい! Vol.2

2016/5/27

ワークショップ初日、朝から雨でした。けやき広場の東屋に集まってきた子どもたちは、みんなレインコートに身を包み、
目の前に広がる雨の原っぱに誘われるように、次第に遠くまで歩いて行きました。雨の日はいつも、ここに大きな水たまりが出来るので、
もみの木園の子どもたちは、水たまりを見に行ったのでしょう。初めての子どもたちは、自分のからだに降る雨をどう感じたでしょうか。
参加者の方たちから、「普段の生活で雨の中を歩くことはないので、楽しみです。」と言われ、雨を感じて過ごす1日に意味を
見出していければいいなと思いました。さて今日の参加者の子どもたちは、5人全員が2歳でした。もみの木園の2歳が6人、
合わせて11人の2歳児が揃いました。小さい人がいっぱい!まずは田んぼの上屋を目指して出発。歩み方は子どもたちのペースで…。
小さい人たちを助けるために、手をつなぐ子どもたち。所々であとからやって来る人たちを待ちながら…。 
一番最後に田んぼに到着したRとSちゃんは、ふたりとも2歳です。Rは4月に入園したばかりですが、もうお客さんのSちゃんを
迎え入れ、道々一緒に遊びながら来ました。田んぼの上屋でおやつを食べて出発しようとしたら、Sちゃんが「水遊びしたい!」と
伝えに来たのです。その横には、Rが「わたしも!」と言わんばかりに輝く笑顔で立っていました。ふたりの願いは、
どうしても叶えなければなりません。ちょうど雨もやんでいたので、出発を延ばして田んぼで少し遊ぶことにしました。
ふたりはすぐに小川で水遊びを再開しました。もみの木園の2歳の人たちは、ここでいつの間にかお弁当を食べ始めていました。
お互いを見ながら、次々に自分でお弁当を出して食べる子どもたち。小さい人たちは一時期、まず自分で出来ること=
<弁当を食べること>に取り組むのです。自分で打ち出す意思の表れのように感じます。食後にTA(2歳)が自分のフォークと
スプーンを上屋の床板の隙間に挟んで大喜びしています。TO(2歳)もたくみの歓声に引き込まれて大喜び。
笑いが止まらないふたりの楽しい楽しい時間。そのうちに雨が降り出したため、瓜久保の家に向かうことにしました。
その道で長い葉っぱを手に持ったK(3歳)「これ、いいね~!ママにプレゼントしよっと。Hにもあげるね。」ともう1枚の葉っぱを
H(2歳)にあげました。受け取ったHに「Hもママにプレゼントする?」とK。H「うん!」K「やっぱりね!そう思ったんだよ。
よかった!」  瓜久保の家でお弁当を食べて、古民家の雨戸を動かしたり、縁側をとことこかけたり、押入れに入ったり、
面白そうなことを見つけて小さいからだが動きあう様子が、共感のエネルギーに満ち満ちていました。雨が上がったので出かけて
行ったかっぱ池でも、お相撲しているかっぱの像に乗りたい子どもたちがいっぱいでした。(5月27日 尾上陽子)

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出会う意味 Vol.3

2016/5/29

今日は清々しい5月最後の日曜日、お父さんとやって来る子どももいて、いつもと違う表情を見せています。お父さんとお母さん、
きっと何かが違うのでしょうね。 雨の初日も楽しい活動が生まれましたが、レインコートの難点は顔がよく見えないことです。
2日目の今日はいい天気で、ひとりひとりの表情がよく見えます。出発すると階段を上る人、斜面を上る人、すぐに枝を拾って来たり、
友だちの名前を呼んだり、まずは気持ちのやりとりをして手をつないだり、今日一緒に過ごすみんなが動き出しました。
先頭の子どもたちは、行く道を決めて進みます。  さくら休憩所へ向かう小道で、モグラが死んでいるのを見つけました。
よく見ると死骸につくゴミムシが数匹でモグラの体を動かしています。すぐに子どもたちが囲んで見始めました。
子どもたちの輪の外側におとなの輪が出来ました。ハエもやってきました。地面に近づくと、いろんなものが見えてきます。
小さなチョウが止まっています。アリもダンゴムシもミミズもいます。しかしみんなが見入っているのは、小さなゴミムシが
運んでいこうとするモグラです。セカセカ動きまわるゴミムシが、時折、モグラの体をぐらっと動かすのです。
そのうちにモグラの体がひっくり返りました。子どもたちの驚きの声が響き、みんなで息を呑んで見守り続けました。
すぐそばにきれいなカメムシもいました。葉陰で交尾しているダンゴムシも見つけました。「もう行こう」と言う人がいても、
まだ見続けたい人もいます。モグラの元を離れた人も、すぐ横の原っぱで思い思いに何かしています。全員が並んでまっすぐに
目的地を目指して…という訳にはいきません。ゆっくり後ろから行く人も、前を行く人たちのことを知っているのです。
前の人も後ろの人を見に戻ってくることもあります。道々、いろんな人と出会っていきます。子どもは子どもを見ているのがよく分かります。
そんな関係のなかで子どもたちひとりひとりが、やりたいことを見つけて行動していくのです。心を動かしているときの充実感が、
お互いを惹きつけ合って人と人がつながっていくのでしょう。これこそ出会う意味だと思うのです。 お弁当を食べた中丸の丘で、
午後は水遊びが始まりました。もう帰りの時間が近づいた頃、1歳7ヵ月のHAくんが大きい子に混じって全身泥んこになり、
からだを弾ませていました。しかしもう着替えをして帰り支度をしなければならず、怒りました。あっちでもこっちでも
「終わりにしたくない」と抗議の声が。心を残しながら帰路に着いた子どもたちをふと見ると、もう気持ちを切り換えて帰り道を
楽しんでいます。HAくんも急な山道の階段を自分でどんどん上り、最後まで歩き通しました。まだ歩き始めたばかりなのに、
なんてたくましい姿なのでしょう。再び、出会う意味を教えられた気がしました。

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遊びはイマジネーション Vol.4

2016/5/31

大雨強風の予報から昨日のワークショップはお休みにして明日に延期したため、 今日は3日目、お客さんの子どもたちは1歳1ヵ月の
Kくんから3歳6ヵ月のRちゃんまで6人が勢揃いしました。参加者の中にKくん(1歳5ヵ月)がもうひとり、もみの木園にもK(3歳)
がいるので、3人のKくんが出会えました。「同じ!」がうれしい子どもたち。2歳の人、3歳の人…と「同じ!」がいっぱいで、
気持ちがつながっていくようです。もみの木園の子どもたちも、なんだか活力がみなぎっているような様子で、10時前には田んぼに
着きました。おやつの後、大きい人たちを中心に集まって土を掘っています。道具は木の枝と手。かなり難航していましたが、
掘り出したのは茶色の小瓶でした。E(6歳)がその小瓶を掲げながら「海賊まつりに使おうよ。この瓶のなかに宝の地図が入ってるって
どう?」と声を弾ませて言いました。「いいね!」とたちまちみんなの思いが重なりました。もみの木園ではワークショップが終わると、
夏まつりの準備が始まります。昨年は11ぴきのねこまつり、今年は海賊まつりと子どもたちが決めてから、何かを見つけると海賊まつり
と関連するイマジネーションがふくらんで、友だちと共有し合わずにはいられないといった感じです。茶色の小瓶は大事に持ち帰りました。
子どもたちは、今持っている力を引き出し合って遊びを創っていきます。イメージを重ねながら、子どもたちひとりひとりが何をしようと
しているのかが分かってくる楽しみがあります。そしてお互いに夢中になる。そんなお互いが面白くて大好きになる。仲良しってこうして
育まれていくのでしょう。今日も中丸の丘でお弁当の後、いろんな遊びが始まりました。いつの間にか裸になった子どもたちがあっちにも
こっちにも…。TK(2歳)は、水を運ぶのにビニール袋を取りに来ました。水運びをしていると、ビニール凧を作って遊んでいる人たちに
気づいたようです。すぐにやってきて水運びの途中のビニール袋を持って「たこ!」と言いました。おまけに枝も差し出して「つけて!」と…。ビニール袋とひもがあれば凧が出来ます。子どもたちは、より高くあげるために長い枝の先にひもをつけて駆け回っていました。
2歳のTKも、それをちゃんと知っていたのです。しかし短い手のひらサイズの枝だったのは、とにかく目の前にあった枝を拾ったのでしょう。2歳らしい判断です。水滴のついた凧が、走るTKの後をふわふわと追いかけていきました。中丸の丘からの眺めは、森の緑が盛り上がって
見えました。J(5歳)が広がる森と空との接点を見て「あっ!夏の雲だ!」と叫びました。もくもくと入道雲のような雲の頭が見えたのです。昨年の今頃、やはりここから夏の雲を一緒に見たことを思い出しました。季節は夏に向かっているのが、今日の空から伝わってきました。
(5月31日 尾上陽子)

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子どものペースで歩こう   Vol.5

2016/6/1

今日はワークショップ最終日、30日の雨天変更にもかかわらず、4組の親子が集まってくれました。今日もいい天気でした。
まずは、おおなばの丘へ。久しぶりに桜の木に登りました。2ヵ月半前の3月に卒園する子どもたちが、この木に登って記念写真を
写していたことを思い出したJ(5歳)が年長組のみんなを木登りに誘って「今度はオレたちだね」と記念撮影。
順繰りに大きくなる子どもたち、登るからだの動きの確かさにも年長の自覚が感じられました。このとき、今日の参加者のKAくん
(3歳5ヵ月)が木に登りたそうでした。しかし登ろうとしたら、こわかったのでしょう。登りたいけれど、登れないもどかしさを
訴えているような様子でした。もみの木園の子どもたちを見ていると、4歳ではなかなか登れません。5歳になってから少しずつ
登れるようになるのですが、今日記念写真を撮った子どもたちも、この過程を踏んできました。今もシャクトリムシのように慎重です。
子どもは自分のペースで、備わった力を試していきます。それは誰にもしてあげられないことで、自ら臨むことに意味があります。
また「こわい!」と感じることも大事なことだと思っています。実は子どもはみんなこわがりです。今日、先頭切って登ったJも、
次に続いたKH(5歳)もこわがりでした。今もこわがりながら、そんな自分を克服していく日々なのです。こんな成長の道のりこそ、
ひとりひとりのペースが大事にされるべきだと思っています。  さておおなばの丘から田んぼへ、いつもの道を向かいました。
途中でお客さんにちっぷさんの木の紹介をするH(5歳)。長い棒で木の節を指し示して「これが目で、これが口」と言うだけでした。
これが皆さんに知ってもらいたいことなのです。子どもが〝その気になって〟伝えていることが大事なことです。  
田んぼの上屋でお弁当を食べて、午後の遊びが始まりました。草が茂って橋を覆っていたため、足を踏み外して小川に落ちてしまった
Yちゃん(4歳)。靴と服が汚れてしまったので洗って乾かしている間、KH(5歳)とM(4歳)が、葉っぱや草の実を色々集めてきて、
おままごとに誘っていました。KHとMは、Yちゃんと遊びたくて、自分たちが出来ることをやり始めたのでしょう。いつの間にか3人が
一緒に、打ち解けて遊んでいました。  朝の出会いから、午後には一緒に過ごす子ども同士の間に安心感が生まれ、ひとりひとりの表情
にも変化が感じられます。「KAくん、強そうなお顔になったね」と言うと、隣に並んだS(3歳)「オレの顔は?」とぎらぎら目を
輝かせて言いました。「Sくんも強そうだね。」この瞬間にふたりが響きあって遊んだ様子が伝わってきました。1日の間にも、
子どもたちの変化に目を奪われます。その意味を考えていこうと思います。(6月1日 尾上陽子)

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Square_wht_Right.png過去の森のようちえんワークショップ便りは以下よりご覧頂けます。

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